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今回ご紹介する本は、田中圭一さんの『うつヌケ』です。マンガ形式で描かれたこの本の画風は、手塚治虫先生にそっくりで、著者が手塚氏を深くリスペクトしていることが感じられます。手塚先生の影響を受けた表現で描かれた「うつ」の象徴的な描写は、心の状態を的確に表現しており、うつを経験したことがない人にも、その感覚が伝わってきます。
田中さん自身も、実はうつ病の経験者です。本書では、自身の体験だけでなく、学者やミュージシャンなど各界で活躍する人々のうつ病経験談もマンガで紹介されています。「うつトンネル」という比喩を用いて、うつの症状が最も強い時期を表現し、本書に登場する人々はみな、その「トンネルを抜けた」後の話です。だからこそ、この本には希望があります。
取材を重ねるうちに、田中さんはうつ病にはある種の法則があることに気づいたそうです。うつになりやすいのは「生真面目」で「責任感が強い」人。そこに「不向きな仕事を無理に続ける」などの「うつトリガー」が加わることで、本格的に発症するのです。しかし、十分な休養や治療を経て、「自分が必要とされている」と感じたり、「自分を好きになる」といったきっかけで、トンネルから抜け出せることが書かれています。
うつ病は有名人でも罹ることがあり、発症すれば非常に辛いものです。しかし、焦らずに適切な治療を受ければ、必ず「うつヌケ」ができると、本書は伝えています。
特に印象的だったのは、過去に虐待やひどい性暴力を受けた女性が、双極性障害や多重人格のような病状を発症し、自らの記憶を消し去ろうとした結果、別の人格を作り出してしまうという話です。また、幼い頃に実母を亡くした悲しみを心に閉じ込めたままうつ病になり、トンネルを抜ける過程でその悲しみを自分で癒しながら立ち直ったエピソードも、人生の重い悲しみがうつを引き起こすことを示唆しています。
また、うつ病の人は独特の認知のゆがみを抱えていることが多いと、本書では述べられています。例えば、部下の女性から毎日文句を言われ続けた女性が、後にその部下が実は憧れていたことを知るエピソードが紹介されています。好意を持つ人に対して噛みつくのも一種の歪んだ表現ですが、それに対して気を病む優しさが逆にうつを引き起こすこともあります。この上司の女性が、部下の女性の歪んだ愛情を理解して受け止めることができたら、つまり認知のゆがみを矯正できていたら、うつにならずに済んだのかもしれません。
最後に、この本はあくまで「治療の手引き」ではないことを強調したいと思います。もし何らかの自覚症状がある方は、自己判断で治療をやめたり、民間療法に頼らず、まずは専門医の指導を信じて治療に専念してください。また、うつに苦しむ方にとっては、この本自体が重苦しく感じられるかもしれませんので、専門家のサポートを受けながら読むことをお勧めします。