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今回紹介する本は、樺沢紫苑さんの『読書脳』でも推奨されていた、スタンフォード大学で依存症研究の第一人者であるアンナ・レンブケさんの著書です。

SNSを止めたいのにスクロールが止まらない、満腹なのに「あと一口」がやめられない。
仕事中にもかかわらず次々と動画を再生してしまう、つい2枚目のポテトチップスに手が伸びてしまう、ゲームをもう一度だけやってしまう――こうした「やめられなさ」は、快楽を感じたときに脳から分泌される「ドーパミン」という物質によって引き起こされます。ドーパミンが放出されると、脳はさらなる快楽を求め、依存症への道を進んでしまうのです。そんな恐ろしいサイクルに陥っていると感じた方には、この“ドーパミン中毒”から脱出するための方法が示された本がおすすめです。

最も効果的な方法の一つが「セルフ・バインディング(自分を縛る)」です。
これは意志の力に頼るのではなく、自分と対象物の間に壁を築く方法です。例えば、ゲームに没頭してしまうなら、ゲームのコントローラーを捨てる。買い物が好きなら、クレジットカードを使わない。SNSチェックが止まらないなら、1日1回だけアクセスすることにする。深夜まで海外ドラマを観てしまうなら、「観ていいのは土曜日だけ」と決める。この本には、衝動的な行動を抑えるための具体的なポイントがいくつも紹介されています。

この本の中で心に残ったエピソードをいくつかご紹介します。
まず、ある中東出身の大学生がアメリカで優秀な成績を修めていたものの、自由な環境の影響で大麻を使用するようになってしまった話です。彼は最終的に、博士の最終審査に合格するまで大麻を断つことを決意し、1年後に見事に達成しました。しかし、合格の夜、友人が大麻を持ってお祝いに来たのです。「君のように賢い人が依存症になるわけない」と友人は言いました。私はこれを読んで意地の悪い友人だと思いました。残念なことに、彼はまた大麻中毒に逆戻りしましたのです。アメリカでは、スタンフォード大学のような優秀な大学生でさえも、こんなにも簡単に大麻やドラッグに触れることができるのかと、恐ろしさを感じました。

また、著者と実母との関係についても興味深いエピソードがありました。著者は幼少期から気難しい性格で、母親とはうまくいかないことが多かったそうです。しかし、彼女は母親に変わってほしいと願うことをやめ、自分自身の性格を受け入れることで、母親との関係が改善されたといいます。さらに、母との対立が今の学者としての強さを育んだことにも気付けるようになったという話には、心を打たれました。

日本では、大麻やドラッグが厳しく制限されていることに感謝の念を抱きました。
本書で提案されている方法は、日本の伝統的な心の統一法に通じるものがあります。「今、ここを感じる」「極端な歓喜に偏らない」(過ぎたるは及ばざるがごとし)など。アメリカの学生たちは、友人がお祝いに大麻を持ってくるような、危険な環境で生きていかなければならないとは、なんと過酷な世界でしょうか。

私自身も、小さなドーパミン中毒と向き合っています。
スマホ依存、甘いものやおいしいものへの誘惑、買い物欲、運動をなかなかしたくないなど、心を律することは他人事ではありません。「依存性のある薬品や嗜好品、行動は一時的な解放感を与えてくれるが、長期的には問題を増すばかりである。」まさに、現代社会は快楽をビジネスにする「ドーパミン経済」の渦中にあるのです。「今、ここ」「呼吸法」など、薬物に頼らず心の快を得る方法が、これからますます重要になっていくでしょう。

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