こんにちは「ゆるりら」です。

大谷選手は偉大すぎて、偉大と言われているピッチャーは「僕はあんなホームランは打てない」と脱帽し、偉大と言われているバッターは「僕はあんな球投げられない」と脱帽。同僚たちは彼のホームランを見て、まるで敵チームのように口をあんぐり開けて頭を抱えています。超一流の選手でも真似できないとお手上げなのですから、一般人は何一つ真似できないと思いますが、ひとつこんなことを感じました。

大谷選手が打てなくなった時、監督が「このパフォーマンスでは、ワールドシリーズで勝つことはできない」と言いました。そのことを記者会見で、ある記者が「どう思いますか」と尋ねたのです(少し意地悪な質問ですね)。すると大谷選手は、「打てれば勝てると思っているのかな、と。打てれば。はい。頑張りたいと思います」と、笑顔で答えました。

急に話が飛びますが、ピースボートの船内で、あるお母さんと子育ての話をしていました。その方のお嬢さんは中学生で、とても優秀な子です。ですから、お母さんはいつも言い負かされるそうです。「こうしたら」「ああしたら」という指示はもう通らない。子どもに反論するといけないと聞いたので、「うん、うん」と子どもの言うことを黙って聞いていると、今度は「お母さんは、うん、うんしか言わない」と怒り出すのだとか。そこでお母さんもたまりかねて反論すると、今度は喧嘩になってしまうそうです。

それを聞いた私は、「あなたは、“お母さんはうん、うんしか言わない”と思っているんだね、と、相手の話を打ち返さずに、そのまま受け取ったらどうかな」と言ってみました。「ゆるりらさんのような言い方もあるんですね」と、驚いたような顔でした。「言い方ってわけじゃなくて、彼女の心を丸ごと受け取って、そのことに対して自分の心を波立たせない、って感じかな」と話しました。その後、私も自分の子育ての頃の話になり、二人とも段々涙ぐんで話し込んでしまいました。心がつながりました。女優さんのように美しいお母さんでした。彼女とあのお嬢さん、どうしているかしら。

大谷選手の返答と、平常心のままの穏やかな笑顔を見て、「これだ!」と感じました。記者は「監督が“打てないと勝てない”とハッパをかけていたよ。どう思うの?」という意地悪な質問に対して、もっと感情的なリアクションを想像していたのだと思います。実際、彼の今までの打席と比べて打てていない日が続いていましたが、「ふーん、監督は“打てれば勝てる”と思っているんだね」と、言われたことに対して自己を波立たせない――そんな揺るがない自己を確立しているのです。

テレビドラマや映画は違います。脚本は、そんなのんびりしたことでは時間内にドラマが進みません。誰かが何か言ったことに瞬時に反応して、自分の気持ちをぶつける。売り言葉に買い言葉。夫がこう言ったら、「あなたはいつもそうなんだから!」と怒鳴る。感情をぶつけ合う――ドラマや漫画は、そうした活きのいい会話で進んでいきます。私たちは、そういう荒々しい感情のぶつけ合いを、記者会見やドラマを通して見せられ続けてきました。だから、「ふーん、あなたはそう思っているんだね」と、ゆったりにこやかに受け取ることに慣れていないのかもしれません。

大谷選手のホームランやピッチングは真似できなくても、あの受け答えと穏やかな笑顔なら、むしろ簡単で真似しやすいと思うのです。野球はやらなくても、お料理の途中に子どもが何か言ってきた時、すぐ自分の意見を言わずに、「ふーん、○○ちゃんはそう思ったんだね」と、オウム返しでもいいから、相手の言葉のボールを跳ね返さず、いったんちゃんと受け取ってみる。そして、受け取ったことを優しく伝えてみてはどうでしょうか。意外に、子どもはちゃんと自分で解決策を持っているものです。

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