こんにちは、「ゆるりら」です。

退職後の大きな夢の一つに、「ピースボートで世界一周」がありました。もともとは夫の夢で、彼が取り寄せたパンフレットを見ながら、「いつか二人で行けたらいいね」と話していたのです。

そんなある朝、散歩中にふと、心の中からこんな声が聞こえてきました。
「船には、一人で行ってもいいんじゃない?」

その言葉に背中を押されるように、私は夫に「一人で世界一周の“下見”に行きたいんだけど、どう思う?」と相談してみました。すると、夫は驚くほどあっさりと「いいんじゃない?」と背中を押してくれました。

すぐに最寄りの説明会を探し、夫と一緒に参加。その場で参加を申し込みました。一番見たかったのはピラミッド。でも、ヨーロッパや北欧、ニューヨークにも一度に行けるなんて、なんて贅沢なのだろう、とざっくりした気持ちで考えていました。

その後、中東の情勢が不安定になり、もし行けなかった場合のことを考えると、職場の人たちには話せませんでした。大風呂敷を広げたまま、夢が消えてしまった…なんて思われるのはつらいですからね。ただ、娘たちには相談し、「素敵な夢だね」と、温かく背中を押してもらえたことは、何よりの励ましでした。

その後は、健康面の準備を中心に、必要な手術、予防接種、歯科治療など、少しずつ整えてきました。

ところが、肝心の荷物の準備や寄港地の勉強は、思うように進みませんでした。方向音痴な私は、寄港地では迷子にならないように、ツアーに参加しようと思っています。YouTubeで紹介されている寄港地の情報も見ましたが、正直、自分で地図を見て外国の街を歩く自信は、今のところありません。

退職してからの楽しみにと思い、荷造りも半分くらいにとどめていたのですが、4月に入ってから風邪をこじらせ、まさかの寝込み状態。服の準備さえ進まず、何を着ればいいのか迷ってばかりです。ただ、和服だけはどうしても持って行きたくて、これは早めに準備していました。

思えば、どんなに憧れだった夢も、いざ目の前にすると「仕事」のように、一つひとつの準備をこなさなければ、近づいてこないのですね。

そんなとき、ふとテレビで観た『プロジェクトX』。ホンダのF1優勝への30年にわたる挑戦が取り上げられていました。
「マネージメントも楽しかったけれど、やっぱり技術者に戻れたことが一番うれしかった」と語る姿に、亡き父の姿が重なりました。技術に妥協せず、自分の信念を貫いた父の背中…。思わず涙が出そうになりました。

「船に乗って旅行する」なんて、一見、楽で優雅に聞こえるかもしれません。でも実際には、自分の体調を整え、提出書類を揃え、荷造りを進め、期日や規定を守って進める、まるで仕事のような日々です。

それでも私は、この「準備期間」も含めて、自分の可能性を広げる大切な一歩だと思っています。

今回は、あくまで「下見」。忘れ物があっても、思い通りにいかなくても、それは次回につなげるための経験です。
「一生に一度」と力みすぎると、緊張ばかりしてしまいそうだから。
だからこそ、深呼吸しながら、ひとつずつ──。

夢」とは、見ているだけでは近づけないけれど、少しずつ動き出せば、いつしか現実に変わるものかもしれません。そんな気づきを、旅立ちの前に改めて感じています。

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