こんにちは、「ゆるりら」です。
Netflixで「阿修羅のごとく」を途中まで観ています。NHKのオリジナル版は、小学生の頃に話の意味も分からないまま観ていましたが、印象的な楽曲だけは強く心に残っていました。
とにかく、驚くほどの美人女優4人が姉妹として登場するドラマ。そういえば、是枝監督は「海街ダイアリー」でも美しい女優陣を揃えてヒットさせましたね。今回の「阿修羅のごとく」は、昭和の時代を驚くほど丁寧に再現していて、感心しました。街並みや庭、板戸の雨戸、電話もないような古いアパート——細部までこだわりを感じます。ファッションも素敵で、特に尾野真千子さんが着ていたワンピースとバッグは、細身のスタイルによく似合い、本当に美しかったです。
「鷹雄」を演じる本木雅弘さんの発声には驚きました。最初は「誰?」と思うほど、昔の男性らしい声だったのです。今のおじさんたちは、ああいう響きのある声を出しません。そして何より、女優さんたちの美しさが際立っています。
それでも、子供の頃に感じた「なんとなく気味の悪い雰囲気」が、今も心を重くします。気になって過去のキャストを調べたところ、「鷹雄」を演じていた緒形拳さんが、「男たちが情けなく描かれすぎている」として途中降板したと知りました。「ああ、そうか。」その瞬間、私も気づきました——このドラマでは、どの男性も情けないのです。
70歳で愛人を囲う父、部長職の「鷹雄」も、ただ大企業で人事に奔走するだけで、妻に隠れて女性と付き合うことが唯一の「工夫」。子供の頃に読んだ向田邦子さんの小説にも、登場人物がどうでもいいことにこだわっている印象があり、気が重くなった記憶があります。それでも、向田作品の細やかな描写は、心の片隅に長く残り続けています。彼女は日常を情緒的に切り取る詩人だったのでしょう。
それにしても、男たちがあまりにも情けない。
昭和の時代、70歳の男性は本来もっと厳しい現実を生き抜いたはずです。それなのに、女房に嘘をついて火曜と木曜に愛人のもとへ通うだけの存在に描かれている。向田作品がそういう作風だからこそ、是枝監督の手によっても同じような描かれ方をしているのでしょう。「鷹雄」も、ただ部長職に上り詰めることだけに必死で、秘書を愛人にし、妻にバレないよう立ち回る——それだけの男。
もしかすると、大企業に勤める男性たちは、本当にそうだったのかもしれません。限られた役職を巡る戦いの中で、仕事ができる人ほど疎まれ、イエスマンだけが生き残る。そんな現実の中で、女性たちの心情を描いた「阿修羅のごとく」が生まれたのかもしれません。
大店の旦那は、女房にピストルで脅されると愛人の後ろに隠れる。ボクサーは減量のストレスで、女を連れ込み、ラーメンを食べ、タバコとビールで憂さ晴らしをする。どの男も、目先のことばかりに囚われ、弱くてみっともない。
50歳を過ぎた男なら、それまでの人生経験を通して得た哲学や生きざま、大切にする信条があってもいいのではないでしょうか。
誰もが「大谷翔平」や「藤井聡太」のような完璧な人物である必要はありません。でも、もっとチャーミングで、もっと純粋で、もっと哲学を持った大きな男が、向田先生の筆から生まれることはなかったのでしょうか。
お母さんが倒れた時、「彼女に振られたよ」としか言えない70歳の男——そんな姿は、あまりにも哀れで、見ていられませんでした。
それでも、こうした人間の弱さや滑稽さを描き出すことこそが、向田邦子さんの作品の魅力なのかもしれません。時代が変わっても、人の心の揺らぎや哀しみは変わらない。だからこそ、今でも向田作品が多くの人に愛されているのだと感じました。