こんにちは、「ゆるりら」です。

前回のブログでは、是枝監督の『阿修羅のごとく』の前半について書きました。小学生のころに見たNHKドラマ版は、何とも言えない気味の悪さしか残っていなかったこと。今回のリメイクは、昭和の空気を見事に再現していると感激しながらも、登場する男性たちの情けなさにがっかりしたこと。そんな印象を語りました。

正直、後半を見るか迷っていたのですが、何気なく再生してしまいました。すると、ボロアパートに住んでいたすずちゃんが、ド派手な毛皮をまとい、オープンカーで登場。彼氏の成功ぶりを知ることになります。

前半では、男性たちがまるで生きる意味を持たないかのような描かれ方だったので、「緒形拳さんがパート2を降板したのも納得」と思ったほど。そんな私のイライラを吹き飛ばしたのが、松田龍平さんの存在でした。

緊張感のあるシーンの中で、まるで灯がともったかのように、温かみのある人間らしさを感じさせる演技。もちろん脚本の力もあるのでしょうが、彼が演じることで、単なる“憎めない男”ではなく、色気をまとった“正直でチャーミングな男”として説得力を持っていました。

特に印象的だったのは結婚式のシーン。引きのアングルで登場した松田龍平さんの姿は、背が高く、とても美しかった。私は中学生のころ、お父さんの松田優作さんのファンだったので、「こんな素敵な息子さんをこの世に残してくれてありがとう!」という気持ちになりました。

また、前半ではあまり存在感のなかった國村隼さん演じる「お父さん」も、松田さん演じる勝又の告白に大笑いする場面から、どんどんと色を帯びていきました。

全体を通して「素敵だな」と思ったシーンのひとつが、宮沢りえさん演じる未亡人の姉がワイングラスを手に、「パーッとやりたい(障子にぶちまけたい)」と言った場面。すると、彼女の浮気相手である内野聖陽さんが、「やれやれ、取り替えるの得意だから」と茶目っ気たっぷりにけしかけるのです。

もちろん「許す」と言っても、それは女の家なのだから勝手な話なのですが(笑)。それでも、翌日、慣れない手つきで嬉々として障子を張り替えている彼の姿は、なんとも可愛らしく、愛しく映りました。

内野聖陽さんの演技もまた魅力的でした。奥さんの前でも悪びれず、浮気相手の前でも罪悪感を抱かない。相手が困っていようが、お構いなしにまとわりついてくる。その甘えた仕草にしびれる女性が多いのも納得です。

女房の前で浮気相手の後ろに隠れるようなダメ男なのに、表情のひとつひとつが可愛く、つい惹かれてしまう。そして、宮沢りえさんとの美しすぎるラブシーンも、このドラマの大きな魅力のひとつでしょう。

内野聖陽さんといえば、『JIN-仁-』の坂本龍馬役がとても素敵でしたが、今回はまるで正反対のダメ男を、色気たっぷりに演じていました。そのおかげで、「こんな男とは別れるべき」と分かっていながら、なぜか離れられない女心にも説得力が生まれていました。

前半は女優4人の美しさが際立っていましたが、後半は男性陣の魅力も満載でした。

特に松田龍平さんの演技には、圧倒されました。彼が画面に映るだけで、そこに“血の通った温もり”が生まれるのです。例えば、彼女の父親と初めて食事をするシーン。緊張のあまりせき込み、こんにゃくを吐き出してしまう場面では、思わず「私もそこに行って背中をさすってあげたい!」と思うほどでした。きっと、お父さん譲りの“女を惚れさせる魔力”を、しっかり受け継いでいるのでしょう。

…ところで、男性の魅力に夢中になって忘れそうでしたが、前半でお父さんの浮気相手のアパートの前で倒れ、ある意味「憤死」したお母さんは、一体どうなるのでしょう?

結局、お父さんは娘や婿に愛され、愛人とも復活し、幸せな老後を迎えそうな雰囲気。一方で、妻は耐え続けるだけの人生なのか…。やはり、昔ながらの「耐える女」なんて、もう古いのでしょう。

嫁姑関係でも、夫婦関係でも、「言いたいことがあるなら、はっきり言う」。そんなふうに、自分の気持ちに正直に生きることの大切さを、このドラマは伝えているのかもしれません。

昭和という時代が、ゆっくりと変わり始めた象徴としてーー。

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